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映画『光』-井浦新さん・瑛太さんインタビュー

直木賞作家・三浦しをんの小説『光』。〝日常のなかにひそむ暴力性〟をテーマにした官能的なサスペンスドラマだ。この作品の脚本・監督を手掛けるのは、三浦さんと『まほろ駅前』シリーズ以来のタッグとなる大森立嗣監督。今回は、監督が熱望し出演となった俳優、井浦新さん×瑛太さんにお話を聞きました。


INFORMATION

映画『光』

11月25日(土)より新宿武蔵野館、有楽町スバル座 ほか全国ロードショー

東京の離島・美浜島に暮らす中学生の信之の生活は、美しい恋人の美花を中心に回っている。信之を慕う輔(たすく)は、父親からはげしい虐待を受けていた。ある夜、信之は美花が男に犯されている姿を見る。そして信之は、美花のためにその男を殺してしまう。その夜に天災が起こり全てが消滅する中、生き残ったのは信之、美花、輔、そしてろくでもない大人たちだけ。それから25年後、秘密を握って〝彼〟が姿を現した。

監督・脚本:大森立嗣
原作:三浦しをん(「光」集英社文庫刊)
音楽:ジェフ・ミルズ
出演:井浦新、瑛太、長谷川京子、橋本マナミ/南果歩、平田満
配給:ファントム・フィルム
©三浦しをん/集英社・©2017『光』製作委員会
公式HP: http://hi-ka-ri.com


“瑛太くんは根っこがブレない
自分の想像してた以上に
大きく深い底が見えない人(新)”

—共演を熱望されていたお二人ですが、お互いの印象をお聞かせください。

井浦新さん(以下、新):瑛太くんの出ている作品を観てきたり、雑誌での発言とかも結構読んでるんですが……。
瑛太さん(以下、瑛太):マジっすか。やば。
新:こうやって取材も一緒にやってるんですけど、本当に変わらないんですよね。僕が勝手に思ってた、半信半疑の瑛太くんの人格のまま。芝居では変わってるんですけど、彼の人間的な根っこのところはずっと変わらない。全然ブレずにそのままでいる。自分の想像していた以上に、大きいというか底が見えない、深い人なんだなって。すごく素敵だなって思います。
瑛太:僕すごいですね(笑)。共演させていただく前に、一度お酒を飲みに行かせていただいたことがありました。新さんと一緒にいると、鏡みたいに自分に全部返ってくるんですよ。新さんの発言を受けて「こういうところを俺は直さないといけないんだ」「もっと人生を、生きることを楽しんでいいんだ」ということを感じたんです。そこで新さんをより好きに、もっと知りたいっていう気持ちが増しました。それから共演が決まって、すごい興奮しましたね。共演していると、僕自身は迷宮にハマっていってしまうというか。僕の今の伝えたいことが新さんの心に届いたのかを考えてしまう。感情も思考も全てかき乱される。でもそれは気持ちが悪いんじゃなくて、恍惚の状態に入っていくような、心地良さなんです。
新:人の話聞かない人みたいになってない? 大丈夫かな(笑)。
瑛太:異次元に連れて行ってもらえるんですよね。その後も何度か一緒にいる時間を持たせてもらったら、僕の生活の中にも新さんが入ってきちゃって。「新さんだったらどうするかな」ってことを考えちゃったりして「危ない、危ない」と思ってます(笑)。
新:お互いにまだわかり合えてないところがいっぱいあるからいいんだろうなって、今話していてちょっと思いました。お互い体も心も削りながら(『光』という作品を)やってみたけど、それでもまだあるんだみたいな。全然まだ先が見えないと感じてるのが、こういう風にワクワクさせられてるんだろうなって思います。


“スクリーンに映る自分を見て
「変な生き物が映っちゃってる」
と思いました(笑)(瑛太)”

—大森監督のキャスティング法が「役に合うか合わないかではなくて、この人と仕事がしたいかどうかで起用する」とのことだったのですが、今回の作品に関して監督の言葉で印象に残ったことはありますか?

新:「自分が今までやってきた映画作りを一回捨てて、ぶっ壊してこの作品に向き合おうと思ってるんだ」という言葉。僕にはもう、それが全てだったっていうか。一球目からそういう球を投げてきたので、自分も監督のテンションと同じぐらいの球を返し続けなければいけないという思いがありました。大森監督のその覚悟に、自分も一緒に、瑛太くんと一緒に、共演者のみなさんと一緒に、監督に返していきたい!とすごく思わされましたね。監督が「この人と仕事がしたいかどうか」で起用するという話は聞いたことなかったですが、共演者のみなさんを見てみると「あぁ、そうだろうなぁ」と思います。大森監督が誰よりも、一番楽しく現場にいますから。
瑛太:僕、何も言われてないんですよね。無言で圧をかけられてたのかどうかさえ、わからない。今撮影していた時間を振り返ってみても、あの頃は思考することさえも許されなかった気がします。本能だけでやってるっていう感覚。それは一人のシーンでもそうだったし、やっぱり新さんとのシーンは、特にそう。この映画において〝今どうしたらいいんだろう〟っていうところじゃないところに飛ばされちゃってたっていうか。試写で自分を見た時に「こいつ誰だ?」っていう変な感じはありました。変な生き物が映っちゃってるみたいな(笑)。それが演出だったのかな、とも思います。

—瑛太さんは『まほろ駅前』シリーズでも大森監督とタッグを組んでいますが、その時はお話しされましたか?

瑛太:そうですね。あの時は、ややこしい松田龍平っていうのもいたんで(笑)。龍平も結構ディスカッションする時はするので「このシーン、もっとこいよ」とか言ってくるから「いや、ここはこうだ。監督どうしますか?」みたいな。そういうやりとりが、今回は一切なかったんですよ。
新:本当怖いですよ、そういうのが一番。信じてくれてるっていう、愛情と捉えた方が楽です。でも結局は圧をかけられて、もがいて恐怖の中から出てきちゃったものがそこに映ってる。少しでも「こんなことしたらいいんじゃないかな」とか「原作読んでて、こういうことを感じたからやってみよう」なんてやったら、(大森監督は)速攻で見抜く人。瑛太くんには特にそれはやったらいけないことだったから、お互い本能でやってた感じがあると思います。自分も演じていくうちに、押し殺してしまっていた暴力性みたいなものとかが解放されていって、それを現場まで隠しながら持っていくのがすごく辛いというか、大変でした。息してるだけでもその周りにいる人たちにすっごい攻撃をしてるような感じの、自分の中で何かすごい怖いものがありました。

—『光』という作品のどんなところに惹かれましたか?

新:暴力を肯定するわけじゃないし、全くそこは共感できない部分もいっぱいある。ただ、共感できるものが全ていいことではないと思います。作品の中で信之はずっと死んだような顔をしてるけど、心の中はものすごく早い回転で動いてて、輔が現れてから信之の心はものすごく生き生きしていたんですよね。月夜の光があって、津波が襲ってくるシーン。月の光が照らしていたあの光は一見静寂の世界に見えるけど、見方によってはそういう光でさえもまた、生命力に溢れているなと映像にも見えてきた。僕はこの『光』が、生命感や命の輝きのように思いました。
瑛太:原作読んでも台本読んでも、『光はどこにあるんですか』という感じで、このタイトルをつけた意図はなんなんだろうとか、ずっと考えさせられる。生と死が、ものすごく紙一重であるということ。人間が生きたり死んだりってことを感じてるところに、エネルギーが発光してるのかな。それが、光なのかなって思います。自分で話してても、わけがわかんなくなってきましたが(笑)。
新:迷宮に入っていきますからね、これは。監督自身も明確な答えを持ってのものではないというか。監督がインタビューで「観る人たちに答えを預ける。あなたはどうなんですか?と、力強く挑発してるような作品なんだと思う」というようなことを言っていたのは、結構ドキッとしましたね。

—最後に、この映画をどんな人に見て欲しいですか?

瑛太:一億二千万人に見ていただきたいですね。
新:こちらは観てくださる方を選びたくないですからね。みんなに観てもらいたいとしか言えないですよ。

左:井浦新(いうらあらた)
1974年9月15日生まれ。東京都出身。1998年に主演映画『ワンダフルライフ』でスクリーンデビュー。以降、映画を中心にドラマ、ナレーションなど幅広く活躍中ほか、日本の伝統文化を伝承する機構の代表理事や、アパレルブランドのディレクターなどとしても活動している。現在、『日曜美術館』(NHK-Eテレ/不定期)で司会を担当。今後、主演映画『二十六夜待ち』(2017年12月23日)、『ニワトリ★スター』(2018年3月)、出演映画『菊とギロチン-女相撲とアナキスト-』(2018年夏)、『赤い雪 Red Snow』(2018年公開)などの公開を控える。

右:瑛太(えいた)
1982年12月13日生。東京都出身。2009年に公開された『ディア・ドクター』(西川美和監督)や『余命1ヶ月の花嫁』(廣木隆一監督)等の作品で、第33回日本アカデミー賞、第52回ブルーリボン賞など数々の賞を受賞し話題に。2018年NHK大河ドラマ『西郷どん』の出演も控える。

(衣装提供)
Arata Iura: Coat ¥45,000、Shirt ¥22,800、Pants ¥27,800 /以上CORONA(BAKU&CO.TOKYO)Shoes ¥18,000/adidas Originals(アディダスジャパン)
問い合わせ先:
BAKU & CO.TOKYO /03-6300-5043
アディダスグループお客様窓口 /0570-033-033

Model: Arata Iura , Eita
Photographer: Kenichi Mui
Stylist: Kentaro Ueno/Arata Iura , Taichi Sumura/Eita
Hair&Make-up: Atsushi Momiyama(BARBER BOYS)/Arata Iura , KENICHI for sense of humour(eight peace)/Eita
Writer: Noriko Hashimoto

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