「プレタポルテ」と「オートクチュール」という言葉を知っていても、本当の意味はわからないという人は多いのではないでしょうか。そこで今回は、プレタポルテやオードブルの意味、その特長やオートクチュールとの違いなどを紹介します。
【目次】
まずはプレタポルテとオートクチュールの言葉の意味から確認していきましょう。
個人のお客様から注文を受けた服を、それぞれのブランドのお針子さんが手作業で製作し、完成した服を注文したお客様にお渡しします。
このような過程で作られるオーダーメイドの一点物の服をオートクチュールと呼びます。
オートクチュールと違って、個人のお客様ではなく、一般のお客様向けに工場で一括して生産された服を販売店が売ります。そういった過程で作られる既製服をプレタポルテと呼びます。
同じブランドでもオートクチュールとプレタポルテのコレクション、発表会や展示会などがあり、それぞれ違うデザインの服を作っています。
オートクチュールを作成していないブランドもありますが、一般的に販売されているブランドの服は、プレタポルテの服ということになります。
オートクチュールは、たった1人のために作られた服。一方で、プレタポルテは高級既製服、つまり、大衆のために大量生産された服を表します。
オートクチュールは高級仕立服を意味し、顧客から注文を受けた服を針子が手作業で製作し、完成した服を注文した顧客に提供します。
一方で、プレタポルテは特定の顧客に対して作るのではなく、決められたサイズに基づいてアパレルメーカーが大衆向けに生産し、小売産業が販売します。
オートクチュール・コレクションは高級仕立服を展示していますが、プレタポルテ ・コレクションは高級既製服を展示しているという違いがあります。
プレタポルテは、フランス語の「prêt-à-porter」という言葉が由来です。「prêt」は「用意ができている」、「porter」は「着る」という意味があります。
フランス語では、元々は「既製服」を表すのに「confection(コンフェクション)」という言葉が使われていました。しかし、安くて低品質な既製服という意味が含められた言葉だったため、それとの区別をするのに高級既製服を意味する言葉として生まれました。
また、英語の「ready to wear(すぐ着られる服)」をフランス語に置き換えて誕生させた造語だと言われています。
そのため、日本でもプレタポルテというと既製服の中でも高級既製服を指す場合が多くなっています。
歴史的な流れを見れば、オートクチュールとプレタポルテの違いをもっと理解しやすくなるので、ここで少し歴史をさかのぼってみましょう。
モードの流れはオートクチュールからプレタポルテへと変化しています。1960年以前は高級服は全てオートクチュールでした。しかし、1960年以降は、一部のブランドがプレタポルテを発表し、それに追随するように他のブランドもプレタポルテを作り始めました。
ファッション界の主戦場は、オートクチュールからプレタポルテへ移り、今やオートクチュールを作るブランドは減り、プレタポルテしか作らないブランドがほとんどになってしまいました。
「パリコレ」といった言葉を耳にしたことがある人も多いでしょう。パリで行われるコレクションの略で、一般にはプレタポルテの発表会or展示会を指します。春夏シーズンと秋冬シーズンで、年に2回行われます。
コレクションで発表された服は、工場で大量生産されそれぞれの販売店へ卸されます。私たちはそのコレクションで発表された服を、雑誌やネットで見ているわけです。
もちろん、オートクチュールのコレクションもあるので、CHANEL(シャネル)やDior(ディオール)といったブランドは、プレタポルテとオートクチュールで、年に4回の大きなコレクションを発表することになります。
「コレクション=ファッションショー」という意見もありますが、ファッションショーが「ブランドやデザイナーが1つのステージで作品を披露するイベント」だとするとコレクションは「いくつかのファッションショーをまとめた総称」だとされています。
コレクションには「オートクチュール」と「プレタポルテ」の2種類があります。
プレタポルテのコレクションが開催される都市は、ニューヨーク・ロンドン・ミラノ・パリ・東京・マドリッド・バルセロナ・サンパウロの計8か所です。
コレクションが開催される期間はファッションウィークと呼ばれ、世界中のメディア関係者やバイヤーが集い、ランウェイと呼ばれる各ブランドの発表するステージに注目します。
特に4大都市(ニューヨーク・ロンドン・ミラノ・パリ)で行われるコレクションは注目を集めます。
中でもパリで行われるコレクションは、モード界で最大のイベントで、集まる関係者の数も多く、コレクションの規模も最も大きいイベントです。
コレクションのフロントロウにはファッション界の大物やセレブが並びます。世界のモードのトレンドを左右するコレクションといっても過言ではありません。
オートクチュールも製作するプレタポルテのブランドはわずかです。
オートクチュールコレクションに参加するブランドは、CHANEL(シャネル)やDior(ディオール)といったビッグメゾンや、GIVENCHY(ジバンシー)、VALENTINO(ヴァレンティノ)などで、年によって数は前後しますが30ブランドほどです。
世界的な規模で展開するブランドは各都市にありますが、代表的なブランドでクチュールのアトリエを持つブランドは、CHANEL(シャネル)とDior(ディオール)です。
他にも世界規模のブランドは、LOUIS VUITTON(ルイヴィトン)、PRADA(プラダ)、GUCCI(グッチ)などです。
次に、プレタポルテの代表的なブランドと歴史や特徴について紹介します。
ジュエリーや化粧品でも有名なCHANEL。1910年、ココ・シャネルがパリに帽子店をオープンさせたのが始まりです。
1919年にオートクチュールのコレクションを発表し、シンプルで機能的なデザインが話題となります。それまでのコルセットでウエストを絞り、装飾性の高いファッションが中心だった女性を解放したことで、人気が集まりました。ブランドのコンセプトとして、自由で自立した女性像が根底にあります。
CHANELと同様に、ジュエリー・化粧品なども展開するDior(ディオール)。フランスのデザイナーであるクリスチャン・ディオールによって1946年に創設されました。
しかし、クリスチャン・ディオールは1957年にブランド創設後わずか11年で亡くなってしまいます。その遺志をイブ・サンローランが継いで、現在でもパリの高級ブランドとしての地位を確立しています。
バッグを中心に人気が高いLOUIS VUITTON。1854年、トランク製造の職人であったルイ・ヴィトンがパリで創業しました。1896年に日本の家紋を参考に考案されたモノグラムは、ルイ・ヴィトンの代表的なラインとして長年愛され続けています。
1913年、マリオ・プラダとマルティーノ・プラダの兄弟によって、イタリア・ミラノで創業されたPRADA(プラダ)。高品質な革製品を生み出し、創業から数年でイタリア王室の御用達となりました。セカンドラインとしてmiu miu(ミュウミュウ)があります。
1921年、イタリアのフィレンツェでグッチオ・グッチが鞄工房を作ったことで誕生した「GUCCI(グッチ)」。1947年に登場したバンブーハンドルのバッグは、GUCCIのアイコンになっています。オードリ-・ヘップバーンやグレース・ケリーなどといった有名女優からも愛されたことで知られます。
プレタポルテのコレクションは、誰でも自由に観覧できるわけではありません。基本的には招待状を送られた人のみが会場に入場できます。招待状が送られるのは、下記のような人々です。
・デザイナーやスタイリスト、ファッションモデルなどの服飾関係者
・有名百貨店のバイヤー
・ファッション雑誌の編集者、新聞記者などのマスコミ・メディア関係者
・セレブや影響力のある芸能人
このように、コレクションの主催者が「見てほしい」と思うような人に招待状は送られています。
日本を代表するファッションショーと言えば東京コレクション(2020年春夏シーズンから「Rakuten Fashion Week TOKYO」に名称を変更しましたが、通称“東コレ”と呼ばれています)。
世界4大コレクションと同様、毎年春と秋の2回開催で、日本の主要都市である東京で開催されることから国内では「世界5大コレクション」と呼ばれることもあります。世界的に通用する呼び方ではなく、あくまで国内での通称ですので覚えておきましょう。
東京コレクションの始まりはTD6と呼ばれる団体の発足がきっかけでした。TD6とは「トップデザイナー6」の略で、山本寛斎、コシノジュンコ、菊池武夫、金子功、花井幸子、吉田ヒロミら6人のトップデザイナーにより、1974年に日本にもファッションショーの風習を作る目的で結成されました。
後に川久保玲、松田光弘、三宅一生、森英恵、山本寛斎、山本耀司の6人のデザイナーがCFD(東京ファッション・デザイナー協議会)を立ち上げ、現在の東京コレクションを開催するに至っています。
今回はプレタポルテについて、オートクチュールとの違いや特長、歴史や代表的なブランドについてご紹介しました。今やモードの主役はプレタポルテですが、その昔はオートクチュールが主流でした。意外とプレタポルテの歴史が短いことに驚かされます。これを機会に、コレクションを見る機会があれば興味を持ってみてください。