免疫力は細菌やウイルスから体を守るもの。免疫力を高めるためには、栄養バランスの整った食事を摂ることが大切です。ここでは、免疫力を高める食事のポイントや食材、免疫力アップにおすすめのレシピなどをご紹介します。
【目次】
「風邪やインフルエンザの対策には、免疫力を高めることが大切」といわれていますが、そもそも免疫力とは何なのでしょうか。まずは、免疫力について確認してみましょう。
免疫力は細菌やウイルスから体を守るシステムです。たくさんの免疫細胞が協力して体中を監視し、侵入してきた細菌やウイルスを撃退しています。免疫システムは15歳までに完成し、20歳を過ぎると、低下していくと考えられています。
■免疫力が下がるとどうなるの?
・風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなる
・肌の調子が悪くなる
・花粉症やアトピーなどのアレルギー症状が出る
・疲れやすくなる
風邪や感染症から身を守るためには、細菌やウイルスを撃退する免疫力を高める必要があります。免疫力をアップさせる方法について見ていきます。
口や鼻、目、気管などの粘膜は、外の空気と体の接点です。粘膜が正常な状態を保てていなければ、細菌やウイルスが体内に侵入しやすくなります。つまり、免疫力を高めるためには、粘膜を正常に保つことが大切です。
ドライアイの人や鼻炎に悩まされている人、口が乾燥しやすい人などは免疫力が下がっている可能性があるので、粘膜を正常にする栄養素が含まれた食事などで対策しましょう。
最近は、平熱が36度以下の低体温の人が増えているといわれていますが、低体温は免疫システムに悪影響です。免疫機能を持った白血球は血液中に存在し、体中を巡っていますが、体温が下がって血行が悪くなれば、白血球の働きが抑えられます。
免疫力を高めたい人は日頃から体を温め、体温を上げることを意識しましょう。
■体を温める方法
・適度な運動をする
・湯船にゆっくりと浸かる
・食事で温かいものや血行を促進するものを食べる
・白湯を飲む
・保温力の高い下着や湯たんぽを使う
運動不足や冷え性、ストレスなどの影響で血行が悪くなると、白血球に影響が与えられて免疫力が下がることがあります。反対に、血流が良くなれば、体温が高まり、免疫力がアップします。
風邪や感染症を予防したいなら、血行を促進して免疫力を高めましょう。
■血行を促進する方法
・栄養バランスの整った食事を摂る
・体を温める
・運動やストレッチをする
私たちは、毎日の生活の中でさまざまなストレスを受けています。適度なストレスは緊張感やトラブルを乗り越える力を高めるメリットもありますが、強いストレスは体に悪影響です。
ストレスによって起こるトラブルの一つが免疫力の低下。ストレスを感じると、免疫力に関わる自律神経の働きが乱れます。
自律神経を構成しているのは交感神経と副交感神経です。このうち、副交感神経はリラックスしている時に優位となり、内臓の働きを高めたり、免疫力を上げたりするのに役立ちます。
ストレスを感じると、副交感神経の働きが弱くなって交感神経が活発に働き、免疫力が下がります。
■ストレスを発散する方法
・ポジティブ思考を心がける
・趣味を楽しむ
・ゆっくりと休む
・ストレスへの抵抗力を高める食事を摂る
免疫細胞の約6割は腸内に存在すると考えられています。便秘などで腸内環境が悪くなると、免疫細胞の働きが弱まって免疫力が下がるので、免疫力を高めたいときは腸内環境を整えることも大切です。
腸内環境を整えるためには、腸内の善玉菌を増やすのが効果的です。乳酸菌を含む食べ物や発酵食品などを食事に取り入れて善玉菌を増やせば、免疫力のアップを期待できます。
人の体は口から肛門までトンネルのように繋がっています。腸は食べ物だけでなく、細菌やウイルスにも触れているため、免疫力を高める食事を意識して細菌やウイルスを撃退しましょう。
正常な免疫システムを維持するためには、タンパク質やビタミン、ミネラルなどの栄養素が欠かせません。脂肪や糖分の割合が高い食事を摂っていると、免疫力が下がる可能性があるため、栄養バランスの整った食事を摂りましょう。
食事に迷ったら、洋食よりも発酵食品や野菜をたくさん使った日本食がおすすめです。
免疫力にかかわる自律神経は体内時計と大きく関係しています。例えば、寝ている間は体温が低めで、起床後は体温が上がります。体温が上がっているときは交感神経が活発に働いていて体が活動状態です。
体内時計は主に朝日を浴びてリセットされるので、夜更かしをすると、体内時計が乱れます。体内時計が乱れれば、交感神経と副交感神経を適切に切り替えられず、免疫力が下がってしまいやすいです。
免疫力を高めるには、毎日、規則正しいリズムで生活することを心がけましょう。一日3回、決まった時間食事を摂ることを習慣づければ、体内時計を整えやすいです。
ダイエット中は体重を落とすために、食事制限をする人が多いです。中でも、若い女性は豆腐やヨーグルト、サラダチキンなどの低カロリー高たんぱくの食事を摂る傾向にあります。
ところが、これらの食品ばかりを食べていると、体が冷えやすいです。体が冷えれば、免疫力が下がるので、ダイエット中も無理な食事制限はやめましょう。特に、ファスティングやプチ断食、過度な水分摂取、無理なカロリー制限には注意してください。
免疫力を維持しながらダイエットをしたい場合は、運動をしたり、温かい食べ物や飲み物を摂ったりするのがおすすめです。
免疫力を高めたいときは、粘膜の働きを活発化したり、腸内環境を整えたりする栄養素を摂取するのも効果的です。毎日の食事に取り入れたい免疫力を高める栄養素をご紹介します。
タンパク質は筋肉や骨、血液、皮膚、内臓などの材料になるだけではなく、免疫細胞を作り出す働きがあります。また、タンパク質が足りず、エネルギー不足になれば、体温が低下して免疫細胞の働きが弱くなります。
そのため、免疫力を高めるためには、タンパク質を摂ることが大切です。魚や肉、大豆、乳製品などに含まれる良質なタンパク質を食事でバランスよく摂取しましょう。
毎日の食事では、ビタミン類の摂取も欠かせません。免疫力のアップに役立つビタミンは主に、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンEです。
■ビタミンA
細菌やウイルスから体を守る粘膜を正常に保つ働きや白血球の増殖を促して免疫力を高める働きがあると考えられています。レバーやうなぎ、ニンジン、ほうれん草などに豊富です。
■ビタミンC
免疫細胞の活性化をサポートする働きがあります。また、ビタミンCはストレスから体を守る働きもあります。柑橘類やイチゴ、緑黄色野菜、イモなどに含まれています。
■ビタミンE
免疫細胞の働きを活性化させる働きがあります。さらに、免疫細胞を破壊する活性酸素の働きを抑える抗酸化力も高いです。アーモンドやカボチャ、ぶり、サンマなどに含まれています。
五大栄養素の一つであるミネラルも免疫力と大きく関係しています。日頃の食事にバランス良くミネラルを取り入れ、健康維持に役立てましょう。免疫力と関係が深いミネラルは亜鉛やセレニンです。
■亜鉛
細胞分裂や新陳代謝を促す作用があり、免疫細胞の活性化や免疫力のアップに効果を期待できます。牛肉の赤身や豚レバー、牡蠣などに豊富です。
■セレニン
強い抗酸化作用があり、免疫力を高めると考えられています。卵黄や青のり、うになどに豊富に含まれていますが、通常の食事を摂っていれば、不足することはほとんどありません。
食物繊維は腸内で善玉菌のエサになります。善玉菌が増えれば、免疫力が高まるだけでなく、慢性的な便秘や下痢の解消にも効果を期待できます。
食物繊維は便を増やしたり、腸を刺激したりする不溶性食物繊維と有害物質を体外に排出する水溶性食物繊維の2種類です。不溶性食物繊維はごぼうや玄米、水溶性食物繊維はバナナや海藻、きのこなどに豊富です。
ポリフェノールは植物由来の抗酸化物質です。ビタミンCやビタミンEと同じように、免疫細胞を傷つける活性酸素の働きを抑制し、免疫力を高めます。
ポリフェノールは多くの食品に含まれていますが、免疫力を高めたいときは、特にゴマやココア、ショウガなどを食事に取り入れるのがおすすめです。
免疫細胞が集まっている腸の働きを活発化する善玉菌のひとつである乳酸菌が含まれたヨーグルトは免疫力を高める効果を期待できる食材。特に、R-1乳酸菌やLB81乳酸菌が含まれたヨーグルトは風邪やインフルエンザなどの予防に役立ちます。
食事の後のデザートに食べるだけでなく、サラダなどに使ってもおいしいです。
食物繊維が豊富なきのこは毎日の食事に積極的に取り入れたい食材。きのこに含まれている食物繊維のβ-グルガンは腸の免疫作用にアプローチして免疫力を高める働きがあると考えられています。
また、体を守る働きのあるタンパク質の生成を促して健康を維持するのにも役立ちます。
ニンニクは香辛料として使われている食材。強い香りの元になっているアリシンには殺菌作用があり、免疫力の向上に役立ちます。疲労回復を促すビタミンB1などの栄養素も豊富に含まれているため、積極的に食事に取り入れましょう。
バナナには善玉菌のえさになるオリゴ糖や食物繊維が含まれています。「シュガースポット」と呼ばれている茶色の斑点が出た頃が完熟のサインで、甘味が増すだけでなく、免疫力を高める効果もアップすると考えられています。
温めると、オリゴ糖が増えるので、生よりも加熱調理して食事に取り入れるのがおすすめです。
かぼちゃはビタミン類が豊富に含まれた緑黄色野菜。ビタミンCやビタミンE、体内で一部がビタミンAに変換されるβ-カロテンが含有されていて、免疫力のアップや抗酸化作用、粘膜の正常化などに効果的です。
食事の際は、かぼちゃスープなどにすると、免疫力の低下に繋がる体の冷えも予防できます。
納豆には、免疫力アップに役立つ納豆菌やレバン、ポリグルタミン酸が豊富に含まれています。また、納豆菌は腸内の善玉菌の働きをサポートする作用もあります。納豆ごはんなどで手軽に食べられるため、忙しくて食事に時間をかけられない人にもおすすめです。
血行を促したり、体を温めたりする生姜は免疫力のアップに良い食材。強い殺菌効果も期待できるので、風邪対策やインフルエンザ対策におすすめです。食事では、スープやうどんなどに入れて生姜を食べると、体が温まり、体温を上げられます。
長ネギには、血流を良くして免疫力を高めるアリシンが含まれています。アリシンは細かく刻んで生で食べると、効果が高まるといわれているので、食事の際は細切りにしてごま油などで味付け、生食するのがおすすめです。
ニンジンに含まれているβ-カロテンは免疫力を高めて感染症を予防する働きがあります。また、β-カロテンは体内でビタミンAに変換されるので、細菌やウイルスから体を守る効果も期待できます。
炒め物、煮物、サラダなどさまざまなレシピにアレンジできるので、飽きずに食事に取り入れられるのもおすすめのポイントです。
レンコンには、ビタミンCの他に粘膜を強化するムチンや抗酸化作用のあるタンニンが含まれています。また、腸内環境を整える食物繊維も豊富なので、免疫細胞の活性化や免疫力のアップに役立ちます。
食事では、煮物に使うのが一般的ですが、肉団子やハンバーグに入れて普段と食感を変えてみるのも良いでしょう。
アジには免疫細胞を作り出すタンパク質の生成に欠かせない必須アミノ酸がバランス良く含まれています。
また、生活習慣病の予防に役立つDHAやEPAも豊富です。春から夏に旬を迎えますが、スーパーなどでは一年中購入できるので、手軽に食事に取り入れられるのも魅力です。
ブロッコリーはビタミンCが豊富に含まれた食材。食物繊維の多いしめじと合わせてガーリックソテーを作ると、免疫力アップに役立つ料理になります。作り置きもできるので、忙しくてなかなか食事を作る時間がない人にも良いでしょう。
ニンジンはビタミンA、小松菜はビタミンCとビタミンEがたっぷりと含まれた野菜です。春雨を加えて一緒に炒めると、一度の食事で免疫力を高めるビタミン類を一気に摂取できます。
ビタミンCは加熱に弱い栄養素。食事で摂る場合は、熱を加えずに料理するか、熱に強いビタミンCが含まれた食材を使うのがポイントです。
カリフラワーは加熱に強いビタミンCを豊富に含んだ野菜。玉ねぎやインゲンなどを加えてポタージュ風のスープにすると、免疫力が高まるだけでなく、体の冷えも取れるでしょう。
納豆やニンジン、小松菜、生姜、ニンニクなどを使った納豆ビビンバ丼は免疫力アップに役立つ料理。納豆に含まれている有用菌は熱に弱いので、火を止めてから仕上げに納豆をのせるのがポイントです。
炭水化物やタンパク質、ビタミン類をまとめて摂取できるので、食事に時間をかけられないときにも良いでしょう。
ニラには、殺菌作用や抗酸化作用があり、免疫力アップに役立つアリシンや体内で粘膜を正常に保つビタミンAに変換されるβ-カロテン、食物繊維などの栄養素が含まれています。タンパク質が豊富な卵と一緒にニラ玉にして食事で摂取すると、免疫力を高められます。
舞茸は食物繊維が含まれている食材。免疫力のアップに役立つといわれているβ-グルカンの含有量も高いです。タンパク質が含まれた豚肉と合わせて食事で摂れば、風邪や感染症の予防に役立ちます。
食物繊維が豊富なきのこを使ったなめたけは腸内環境の改善に良いとされています。体を温めたり、腸内環境を整えたりする発酵食品の醤油麹で味付けすると、免疫力を高める食事のメニューになります。
ほうれん草やニンジンにオリーブオイルを加えた洋風白和えも免疫力アップに効果的。ほうれん草やニンジンのビタミンAはオリーブオイルと一緒に摂取することで吸収力が高まります。洋風にした白和えは子供から大人まで幅広い人におすすめの食事です。
必須アミノ酸やDHA、EPAが含まれたアジは免疫力を高めたいときにぴったり。回鍋魚にしてキャベツやピーマンと一緒に食事に取り入れると、免疫力アップや高血圧予防などの効果が高まると考えられています。
豆腐はタンパク質が豊富な食材。生姜やニンニク、ニラも入っている麻婆豆腐は免疫力を高める効果を期待できます。寒いときに食べれば温まり、免疫力の低下に繋がる冷え予防にも役立ちます。
食事のときは、免疫力を高める成分が含まれている飲み物を飲むのがおすすめです。免疫力を高める食材と飲み物の相乗効果で風邪やインフルエンザを予防できるでしょう。
緑茶には、免疫力を高めるポリフェノールの一種であるカロテンが豊富です。中でも、エピガロカロテンガード(EGCG)は抗ウイルス作用があると注目されています。日本人が慣れ親しんだ緑茶はどんな食事にも合わせやすいところもおすすめのポイントです。
紅茶にも、免疫力アップに役立つポリフェノールが豊富に含まれています。ミルクティーにすると、ポリフェノールの働きが抑えられるため、ストレートかミルクで飲むのが良いでしょう。
食事中だけでなく、食後にゆっくりとリラックスして飲むのも人気です。
乳酸菌飲料はその名前の通り、乳酸菌が含まれた飲み物。乳酸菌は腸内の善玉菌のエサになり、腸内環境を高めて免疫力をアップさせます。朝の食事でトーストやグラノーラなどと一緒に食べるのがおすすめです。
食事だけでビタミンやミネラルを十分に摂取できない場合は、野菜ジュースを飲んで免疫力を上げましょう。
野菜ジュースの成分表記は使われている量が多い順番に書かれています。免疫力を上げるニンジンやほうれん草、カボチャなどが初めの方に記載されたジュースを選ぶと、効果を期待できるでしょう。
リンゴには、食物繊維やポリフェノールなどの免疫力アップに役立つ成分が豊富です。また、血圧を下げるカリウムや疲労回復に役立つリンゴ酸も含まれています。食事と一緒に飲んで免疫力を高めたい人はリンゴ果汁が多いジュースを選んでください。
免疫力を高めたいなら、食事以外の生活習慣も見直してみましょう。ちょっとした習慣を心がければ、免疫力がアップして風邪や感染症にかかりにくくなるかもしれません。
適度な運動は自律神経を整えたり、血行の促進に繋がったりします。特に、デスクワークなどで運動の習慣がない人は、日頃から体を動かすことを意識しましょう。
ただし、無理な運動は免疫力のアップに逆効果です。いきなりハードな運動をすると、心拍数が乱れて交感神経が活発化するため、免疫力を落とす可能性があります。免疫力を高めるために運動するなら、軽く汗ばむ程度に体を動かしましょう。
運動が苦手な人はお風呂上りのストレッチを習慣化したり、通勤や通学で歩く距離を伸ばしたりするだけでも効果を期待できます。
体温が下がると、免疫細胞の働きが弱くなって免疫力が下がります。冷え性の人や寒い時期は服装や食事などを工夫してなるべく体を冷やさないように心がけましょう。
温かい食べ物や飲み物を口にしたり、保温力の高いインナーを着用したりすると、冷えを予防できます。また、ニンジン、ゴボウ、レンコン、玄米、納豆、キムチなどの体を温めると言われている食材を食事に取り入れるのも良いでしょう。
ストレスは免疫力を落とす原因。免疫力を高めたいなら、ポジティブ思考を心がけましょう。
また、よく笑うことも免疫力のアップに繋がると考えられています。
笑うと免疫細胞が活性化するといわれているので、楽しいときや嬉しいとき、おいしい食事を摂ったときなどは思い切り笑いましょう。笑顔には、ストレスに関係するホルモンを減少させて心を落ち着ける効果も期待できます。
免疫力は細菌やウイルスから体を守るシステム。免疫力を高めると、風邪やインフルエンザの予防に繋がります。食事で免疫力を高め、健康を維持しましょう。